海洋資源開発でなりふり構わず手を広げ始めた中国の戦略とは

中国の海洋進出_アイキャッチ

需要急増によりまかないきれない資源を求めて積極的な海外進出を進めている中国ですが、強引なその手法は周辺諸国や進出先の国々から強い反発を呼んでいます。
なぜ中国は反発を集めてまで海外進出を急ぐのでしょうか。今回は資源を求めて海外進出を続ける中国の戦略をさぐってみます。

中国が進める国外での資源開発

総人口が12億人とも15億人とも言われる中国ですが、改革開放政策によって沿海部の生活水準が大きく向上したことにともない資源需要が急増したため、1990年代に入って資源を求めて積極的な海外進出を進めています。その進出範囲はまさしく世界規模であり、東シナ海・南シナ海の海底資源から、アフリカの奥地の鉱山まで、中国の国営企業と中国人労働者が大挙して進出しています。

資源開発の推進と国際関係の悪化

このように中国国外で進めている資源開発によって、中国は周辺各国や企業や労働者が進出した国々との国際関係の悪化を招いています。日本が関わりのある資源開発による関係悪化の主なものとしては、東シナ海のガス田開発が知られていますが、海外に目を向けてみると南シナ海での海洋進出が国際的に大きな問題となっています。

  • ベトナムとフィリピンの間にある南沙(スプラトリー)諸島については、中華人民共和国、中華民国(台湾)は全体の領有を主張し、対するベトナム、マレーシア、フィリピン、ブルネイの4カ国は一部分の領有を主張している。
  • 中国・海南島の南方にある西沙(パラセル)諸島については、中華人民共和国、中華民国(台湾)、ベトナムの3ヵ国が領有権を主張している。
  • 中国とベトナムはトンキン湾、マレーシアとベトナムはタイ湾、マレーシアとフィリピンは東ボルネオ沖を巡って排他的経済水域を主張している。

南シナ海 – 領土・権益問題 – Wikipedia

特に東シナ海・南シナ海での積極的な海洋進出は、資源開発という目的と同時に「列島線」と呼ぶ対米防衛戦略の一環でもあり、中国の領域外を通る列島線がかかる国々は強烈に反発しています。
このほかにも国営企業や中国人労働者が大挙して進出している中央アジアやアフリカ諸国では、進出した企業や労働者が現地社会に溶けこまずに独自の中国人社会を構成して生活しているため、現地社会とのあつれきを生んでいることも問題となっています。

なぜ中国は資源開発を急ぐのか

南シナ海の領有権争いをはじめとする国際関係の悪化を容認してまで、中国が海外での資源開発を急ぐのはなぜでしょうか。もっとも大きな理由としては、12億人とも15億人とも言われる国内人口を養うために必死になっていることがあげられます。既に主要国並みの生活水準に達している上海などの沿海部の中産階級のあとには、建国直後と変わらない貧しい生活水準にとどめ置かれている西部山間部の農村に住む無数の農民がいます。
農村部のゲリラ戦から国家を興した中国としては、これらの農民を放置しておくことは国家転覆を招く可能性は否定できません。
現実に併合したウイグルやチベットなどの自治区の独立運動派による地方でのテロ活動の活発化は、各地方政府にとって無視できない重荷となりつつあります。

中国が特に東シナ海・南シナ海で海洋進出を急ぐ理由としては、対米防衛戦略の一環である「列島線」の設定を急いでいることも見逃せません。
公表されている内容では、列島線には第一列島線と第二列島線の2本が設定されていて、それぞれの列島線は役割が定められています。

第一列島線は、九州を起点に、沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島にいたるラインを指す。中国海軍および中国空軍の作戦区域・対米国防ラインとされる。マスコミ発表ではこの第一列島線に日本列島の一部が含まれており、日本の一般国民には寝耳に水であったため、一時期問題となった。
中国海軍にとっては、台湾有事の際の作戦海域であり、同時に対米有事において、南シナ海・東シナ海・日本海に米空母・原子力潜水艦が侵入するのを阻止せねばならない国防上の必要のため、有事において、このライン内においては、制海権を握ることを目標として、戦力整備を行っており、また作戦活動もそれに準じている。
第一列島線 – 第一列島線 – Wikipedia

第二列島線は、伊豆諸島を起点に、小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアに至るラインである。近年に至るまで、中華人民共和国の海洋調査は、第一列島線付近までに留まっていたが、このところは第二列島線付近でも調査を行っている。海洋調査は他国の排他的経済水域内では行えないため、第二列島線付近にある沖ノ鳥島問題が持ち上がっている。
この第二列島線は、台湾有事の際に、中国海軍がアメリカ海軍の増援を阻止・妨害する海域と推定されている。中国海軍は従来、沿岸海軍であったが、日本や台湾を含む諸外国・諸政権の実効支配下にある第一列島線を突破して第二列島線まで進出することは、すなわち外洋海軍への変革を目指していると考えられ、その動向が国内外で注目されている。
第一列島線 – 第二列島線 – Wikipedia

1990年代に入ってこのような自国領域外での国土防衛(と同時におこなう積極的な海外進出)を志向するようになったのは、六四天安門事件や台湾海峡危機によって、仮想敵がそれまでの旧ソ連(ロシア)から、アメリカ(と同名を結んでいる日本)に変わったからです。
法制面の整備は

  • 1992年に制定された南沙(スプラトリー)諸島や西沙(パラセル)諸島、尖閣諸島を自国領とする「領海法」
  • 1997年に制定された国防の範囲を海洋権益の確保まで含めるとした「国防法」
  • 制定に向けて準備を進めている「海島法」

などの整備によって、着々と進められています。それを裏付ける戦力面の整備は予定よりも遅れているものの、ソマリアの海賊問題に対処している国際任務部隊(第150合同任務部隊:CTF-150)と連携する独自の部隊を派遣するなど、こちらも着々と整備と実践が進められています。

日本を含む周辺諸国の対応はどうなっているのか

このような中国の資源開発と同時に進む海洋進出に対して、日本を含む周辺諸国はどのような対応をしているのでしょうか。

現在もっとも領有権争いが激しい南シナ海では、経済規模の大きい中国が各所に人工島を建設するという強引な手法をとっているため、静観する構えだったアメリカが本格的に参戦し、「航行の自由」作戦としてイージス駆逐艦を人工島の沖合に航行させるだけではなく、横須賀を母港とする第7艦隊を含むアメリカ太平洋艦隊の増強を打ち出しています。このように急速にエスカレートしている南シナ海の領有権争いに対して、日本が前面に出ている東シナ海では、2010年の中国漁船衝突事件以降、尖閣諸島をめぐる海上保安庁と中国海警の小競り合いが頻発しています。
自衛隊による防衛戦略を定める「防衛計画の大綱」では、これまでの防衛戦略を大きく転換して「統合機動防衛力」に基づいた防衛力を整備することで尖閣諸島・先島諸島を含む南西諸島の島しょ防衛を重視する方針を打ち出しています。
更に2014年にそれまでの武器輸出三原則にかわって採用された防衛装備移転三原則に基いて、東シナ海で中国と衝突しているフィリピンをはじめとする東南アジア諸国に対して、装備品の輸出を行うことで事態に対する能力の底上げを図るとの報道もあります。

おわりに

このように資源確保を目的としながら、同時に海洋進出も進めている中国の政策には、日本を含む周辺諸国から強い反発があるだけではなく、それに対応するために様々なコストを強いています。今後の国際社会の反発はますます強くなることが予想されますが、資源確保と国土防衛のためにその歩みが止まることはないと思われます。

関連サイト

外務省