日本が超資源国になる未来、メタンハイドレートの実態と経済への影響

メタンハイドレード_アイキャッチ

近年のシェールガスの台頭により影が薄くなっていますが、資源の埋蔵量が期待できない日本で例外的に豊富な埋蔵量を期待されている資源としてメタンハイドレードがあります。そもそもこのメタンハイドレードとはどのようなものなのでしょうか。現在の技術開発はどこまで進んでいるのでしょうか。今回はメタンハイドレードに関わる事柄を見てみましょう。

メタンハイドレードとはなにか

メタンハイドレードとは、都市ガスなどに使われる極めて燃焼性の高い「メタン分子」が、低温高圧の環境下で水分子に囲まれた状態になることで生成される固体状の物質のことを言います。
現在の主要エネルギー源である石炭や石油と比べると、二酸化炭素の排出量は半分程度と言われ、地球温暖化対策の観点から有効な新エネルギーの1つとして考えられています。

メタンハイドレードは構成物質の8割が水分であり、1立方メートルの個体のメタンハイドレードを解凍すると、164立方メートルのメタンガスと多量の水に変わります。
物質としての状態は極めて安定していますが、引火性が極めて高いために古くから「燃える氷」として知られていました。

メタンハイドレードは低温高圧の環境下でしか生成されないため、確認されている埋蔵量のほとんどは海底にあり、採掘の容易な地表に露出している部分はシベリアの永久凍土地帯のわずかな地域に限られています。
そのため後発のシェールガスに対して開発こそ先行していたものの、シェールガスの商業生産が本格化した2015年に入っても商業生産の目処は立っておらず、技術開発にかける人員・予算ともに削減されつつあります。

メタンハイドレード採掘によって期待される日本の資源国化と世界経済への影響

商業生産に黄信号の灯っているメタンハイドレードですが、仮に商業化した場合にはどの程度の埋蔵量が期待されているのでしょうか。

1996年の調査では日本近海でも7兆3500億立方メートルの埋蔵量が確認され、これは日本の天然ガス使用量に換算すると96年分にもなる膨大な埋蔵量です。
仮にこれだけの埋蔵量を低コストで採掘できる技術が確立されれば、政治的リスクの高い中東産油地帯に大きなウェイトを置いている現状のエネルギー供給体制から大きく転換することが期待できます。

更に現在のエネルギーの純輸入から輸出による利益も期待できるため、巨額の財政赤字に悩んでいる日本の財政状況にとって大きな福音となることも考えられます。
しかし、エネルギーの純輸入国である日本が輸出国に転じるとシェールガスの商業化によって原油価格が急落して世界経済に大きな影響を与えたように、先物取引を含めた商品市場やFXなどの為替市場にも大きなインパクトを与えることはほぼ確実です。

そのため、仮に商業化に成功したとしても生産と輸出には慎重な判断が必要とされそうです。

メタンハイドレードのライバルとなるシェールガス

このように資源市場に大きな影響を与えることが予想されるメタンハイドレードの商業採掘ですが、2016年時点は商業生産に成功していません。
これに対して資源として注目されたのは後発ながら、先に商業生産に成功した資源としてにわかに注目を集めているのが、シェールガスです。
シェールガスとは頁岩(けつがん:shale)層から採掘される天然ガスのことをいい、中央アジアや中東に集中している従来のガス田とは異なる場所から採掘されることから、「非在来型天然ガス」と呼ばれています。

シェールガスが資源として注目されるようになったのは1990年代でしたが、注目された当初は資源としてそれほど重視されていませんでした。
しかし2000年代に入ると安定した採掘を可能とする新技術が開発されたことや原油価格の高騰により、それまで採算が成り立たなかったシェールガスでも利益を上げられる目処がついたことにより商業生産に弾みがつきます。商業生産が本格化した2010年代後半に入ると、主要な生産国であるアメリカの天然ガス輸入量が急減したため、商品市場での天然ガス価格が急落しただけではなく、それまで高騰する一方だった原油価格の急落の大きなきっかけの1つとなりました。

このように資源需給にも大きな影響を与えたシェールガスですが、確認されている埋蔵量だけでも中国の36兆1千億立方メートルを筆頭に膨大な量があり、今後の資源需給に更なる影響を与えることも予想されています。

原油価格の低迷はメタンハイドレード採掘にどのような影響を及ぼすか

シェールガスの商業生産の開始と需給バランスの変動は、メタンハイドレードの採掘にどのような影響を及ぼすと考えられるでしょうか。

メタンハイドレードの商業生産にはいくつかの問題がありますが、生産技術の確立や経済性の確保、環境への影響評価といった問題点があげられています。これらの中でも現在直面している問題としてあげられるのが、生産技術の確立です。後発のシェールガスは埋蔵量のほとんどが採掘容易な地層にあったことや、従来技術の応用で生産技術が確立できたことなどから先行して商業生産に成功しましたが、メタンハイドレードは埋蔵量のほとんどが深海底に確認されている上、従来技術では安定した採掘が難しいため、技術開発が急がれていますが、進んでいません。
また、原油価格の高騰という追い風を受けることで商業生産を軌道に乗せることができたシェールガスとは異なり、先行するシェールガスの生産開始によって原油価格が急落したことにより、メタンハイドレード開発のインセンティブは大きく落ちこんでいます。

これらの様々な問題を含む最も大きな問題として上げられるのが、環境への影響です。メタンは気体の状態で二酸化炭素の20倍を超える温室効果があると言われ、生産や輸送途中に漏出するメタンが地球温暖化に対して、大きな影響を与えることが予想されるとの論文も一部の学者から発表されています。

メタンハイドレード商業生産の可能性はどのくらいあるのか

生産技術の確立や経済性の確保、環境への影響評価をはじめとする様々な問題点が指摘されているメタンハイドレードの生産ですが、現時点での実用化の可能性はどの程度あるのでしょうか。世界でもメタンハイドレードの商業生産の開始にもっとも熱心な国は日本であり、鉱物資源の安定供給を目指す国立研究開発法人「産業技術総合研究所」の内部に専任プロジェクトチームを設置するほどの力を入れていました。
しかし長年の研究開発にも関わらず結果が出ていないことや、後発であったシェールガスの商業生産の先行などを鑑みて、プロジェクトチームを縮小解体したうえで技術開発を継続するなど、メタンハイドレードの商業生産への熱意はかつての勢いはなくなりつつあると言えそうです。

おわりに

次世代のエネルギー資源として期待されていたメタンハイドレードの足踏みとは裏腹に、後発であったシェールガスの商業生産が先行したことで、資源としてのメタンハイドレードはかつてほど注目を集めなくなりました。
しかし日本のEEZ圏内で確認されている資源の中では最も有望な資源であり、今後の地道な技術開発による実用化には期待が寄せられているのも事実です。メタンハイドレードが実用化されれば、シェールガス以上の影響を商品市場に与えることが予想されるため、今後の経過に注目するべき技術の1つと言えるでしょう。

関連サイト

経済産業省資源エネルギー庁